アイアムエリ

自己紹介をする時に、フルネームを言うべきなのか、苗字だけでいいのか、それとも名前だけでいいのか悩むことがある。

生後42年現在、わたしの中では仕事=苗字、プライベート=名前と分けているのだが、自分がプライベートだと思っている場面でわたしのことを苗字で呼ぶ人もいるから怖い。うっかり「えりでーす」と懐に飛び込もうとしたら、「や、こちらビジネスですから」と突き返された感じ。そもそもそういう微妙な関係の時はフルネームを言って相手に扱い方を任せているのだけど。

そうした自己紹介の使い分けは、これまでの経験でなんとなく培ってきたものだが、わたしの初自己紹介は今でも苦い思い出として鮮明に残っている。

わたしが幼少期を過ごした地域では、地区ごとに「子ども会」なるものがあって、学校の行事とは別に、季節の行事や集会、地区対抗の球技大会や運動会もあった。

子ども会には小学1年から6年までが参加することになっていて、小学校入学の直前に初めて集会に参加した。新1年生の歓迎会だった。集会所には小学生と保護者の30人くらいが集まり、長机にはお茶やお菓子が並べられ、子ども達はそれぞれにはしゃいで大暴れしていた。

同じ地区にわたしが通っていた保育園の友達がひとりもいなかったので、持ち前の人見知りを発揮し、3つ上の兄の隣に隠れるように座っていた。

しばらくすると、1年生は前に出て自己紹介をせよ、ということになった。これがわたしの初めての自己紹介だ。

それまでも保育園を転園した際なんかに、似たような場面はいくつかあったが、みんなの前で担任の先生が「新しいお友達のえりちゃんです。みんなよろしくね」という感じで、代わりに挨拶してくれたのだ。

新1年生はわたしを含めて5、6人だったと思う。「タカハシミホです!よろしくおねがいします!」「オイカワナミエです!よろしくおねがいします!」と次々に威勢のいい自己紹介をしていく。ついにわたしの番がきた時、言葉につまってしばらく立ち尽くした。そして、やっと、やっとの思いで口から出たのが

「えりです!」

からの号泣。えりの「え」ぐらいでもう視界はぼやけていた。

からの上級生からの爆笑の洗礼。

今まで、ただの「えり」だったのに。苗字なんて使ったことがなかったのに。だけどこれからわたしはキクタのエリじゃなくちゃいけないんだって、社会の波にのみこまれて転んだ瞬間だった。

次の試練は3年の時だった。市内の小学生を集めた野外活動に参加するため、市民会館の檀上で自己紹介をする場面があった。子ども会のメンバーや同じ小学校の中での自己紹介には免疫ができていたが、知らん人いっぱいの前で自己紹介をするのは小1のあの日以来だ。しかも、市民会館だなんて、この街に来る芸能人は全員ここでショーをするような大きな会場だ。そんな「大舞台」で、わたしはトップバッターのくじを引いてしまった。

渡されたマイクを両手で握りしめ「○○小学校3年1組の●●エリです!」と声を振り絞った。やった!学校名にフルネームを添えて、完璧だ!成長~!と思ったのもつかの間。会場が失笑に包まれた。

「1組wwwwwwww」

と会場のあちこちから聞こえる。(組いらないのか・・)恥ずかしくて一刻も早く檀上を去りたかったが、班は小3から小6までの15人ほどで、加えて大学生くらいのリーダー役も数人いてそう簡単には終わらない。リーダーは大森うたえもんに似ていた。(大森うたえもん似だなぁ~)と思いながらうつむいて過ごすしかなかった。

このふたつのしくじりを、自己紹介の場面で必ず思い出す。今ここで相手が求めているのは苗字なのか、エリなのか、フルネームなのか。放った自己紹介は正解だったのか。結構ビビってその場を過ごしていたりする。

ちなみに「えりちゃん」と呼んでくれる人がすんごく好きです。「えりさん」でも好きです。(歳下友達に多し)「キクちゃん」(主に仕事から派生して仲良くなった友達に多し)も好きです。でも、「えりちゃん」コールに対しては心の中でしっぽを振りまくりキャンキャン吠えてます。

ちなみに猫派です。