初恋

「첫사랑이었다(チョッサランイオッタ)/ 初恋だった」は韓国ドラマの名作『トッケビ』の名名名名名ゼリフだ。とかいって、わたしは鬼滅の刃のセリフをひとつも知らないし、前前前世が何かも知らない。なんだってそんなもんだろう。自分のタイムラインがこの世の全てだと思ってはいけない。

もしも、「あの人に会いたい」的な番組に出ることになったら誰を指名するかは、とんねるずの食わず嫌い王に出たらどの一品を選ぶかに次いで検討される問題だと思う。

食わず嫌いで何を出すか決めかねて番組は終わってしまったが、わたしには迷いなく会いたい人がいる。それは小学校の担任だった鹿野和良先生だ。

鹿野先生に会うまでは、いつも早退する方法ばかり考えていた。よく使っていたのは、涙袋に力を入れて目を細め「具合が悪いです」という方法。これを使うと女性の先生は「あら、すごいクマじゃない!すぐに保健室に行きなさい」と言ってくれる。そして保健室で体温計をこすって熱を上げるというコンボでなんとか帰ることができた。

1、2年と同じクラスに同じ先生で、3年生の時、クラス替えとともに新しく担任になったのが新卒の鹿野先生だった。そこから学校が急激に楽しい場所に変わった。

鹿野先生は教室に竹刀を置いていて、怒ると竹刀を胸に突きつけながら「てめえ、逆らったらどうなるかわかってんだろうな」というような雰囲気を出す。当然そんなことは口に出して言わない。でも確実に「わかってんだろうな」感がメガネ越しの眼光と竹刀を通じてビンビンに伝わる。それにむちゃくちゃシビれたし、音楽の時間、生徒に冷やかされながらオルガンに必死になる姿にキュンとした。

先生が褒めてくれたり笑ってくれたら嬉しかった。怒られても素直に反省できた。だから勉強もがんばったし、悪ふざけや怒られそうな行動もバンバンした。

5年生は別の先生になって、6年生になる時、鹿野先生が転勤することになった。先生の受け持ちをとっくに離れているのに、わたしは離任式で周りが引くほど泣いた。あまりに泣くから、式の終わりに花束を抱えた鹿野先生が近寄って来てかがんで目線を合わせ「泣かないで」と言ってくれた。余計に泣いた。なぜこんなにも泣いてしまうのかわからなかったけど、とにかく涙が止まらなかった。

あれは「初恋だった」と気がついたのはだいぶ歳をとってからだ。「初恋は実らない」とよく言われるのは、きっと初恋の最中にそれが恋だと知るすべがなく、幾つかの恋愛や恋愛風を経験して初めて気がつくからだ。

別れを思い出して胸を焦がさない恋は、恋愛風としてカウントすることにした。となると今んとこガチ恋は2件。平均すると15年に1度の計算だから、そろそろ次、来ちゃう計算。