ありさが教えてくれたこと

ポニーテールは男子生徒の性を刺激するという理由で校則で禁じている学校があるらしい。

わたしが中学の時、学年で一番の美人さんが、片方の耳の下で一つに束ねたスタイルにしていて、「うなじが色っぽ過ぎる」という理由で注意を受けていた。注意したのは女の先生。独身で、ベテランの音楽の先生だった。

我々、田舎っぺの生徒側にそんな発想はなかったから、横ポニの危険性について誰もピンときていなかったし、注意された美人さんも全く納得がいっていなかった。

でも、とにかくダメだと言うので、美人さんは結ぶ位置を少し変えた。もしわたしが同じヘアスタイルにしていたら、注意の対象にはならなかったと思う。彼女は顔が整っているだけでなくグラマーだったから、美人税みたいなものだなと、かわいそうにと思った。

意味が分からないけれどまあ、先生が言うんだから、従うべきなのかなとその時は思っていたけれど、その後、納得がいかない出来事が私にも降りかかった。

当時、観月ありさに猛烈に憧れていた私は、ありさみたいなファッションを目指し、好きな飲み物はありさがコマーシャルをしている「シャッセ」だった。ありさみたいなサラサラロングになりたくて「ヘアメークシャンプー」を使いたかったが、実家が床屋だったから、市販のシャンプーを購入する文化は我が家にはなく叶わず。

中学を出て、寮生活のために実家を出た時は真っ先に「ヘアメークシャンプー」と「海と太陽の恵みボディソープ」を買った。ボディソープはとてもいい香りだったが、シャンプーは床屋の道具屋から仕入れるヤツの方が断然サラサラになった。


ありさのファッションといえば、特に『TOO SHY SHY BOY!』の時の、この日の衣装が好きで、録画したビデオを擦り切れるほど観た。そしてありさ並に短いAラインのワンピースを買った。

そんなお気に入りのワンピースを着て家族でスーパーへ行った時、たまたま数学の先生に会って、軽く挨拶をしたのだけど、後日、担任に、わたしのスカートが短かすぎるから注意するように言ってきたらしい。指摘したのはいつもジャージを履いている女の先生だった。

学校でもないのに、なぜスカート丈を注意されるんだ!ありさなのに!とめちゃくちゃムカついて、嫌いな数学がますます嫌いになった。

ポニーテールやミニスカート禁止令が発情男子対策だとするならば、当時の女子の体操服が問答無用でブルマだったことの方がよっぽど良くないだろって誰も思わなかったわけ?ミニスカートを履くことには敏感なのに、ほぼパンイチで体操させることには何とも思わなかったのか、甚だ疑問である。

中学生の頃は、雑誌『明星』をよく買った。「麻布生まれって言うとすご~いってゆーけど、わたしが住んでたのは麻布は麻布でも下町の麻布十番!十番祭りではあんずあめをよく買ったなぁ~!」という文章と共に、有栖川公園の小川ではしゃぐありさの写真があったのを今でも記憶している。

当時「下町」という概念と「あんずあめ」を知らなかったわたしは、「下町っていうのは東京の田舎かな?憧れのありさも実は庶民的なんだな~」と親近感をもった。

東京に移住してかれこれ25年ほど経つ。麻布十番のハンバーガーショップで働いたこともある。麻布十番に住めるのはゴリゴリのセレブだし、十番祭りは人が多すぎて、できれば近づきたくはない

憧れのありさになれないことは、とうの昔にわかったけれど、お祭りに行ったら必ずあんずあめを買っている。あんずあめは、ありさが教えてくれた東京の味だ。