おしゃれの価値観

わたしの中でおしゃれな人の代表といえば母だ。若いころからコムデギャルソンやヨージヤマモトの洋服を集めていて、丁寧に手入れをし、20年、30年モノも新品のように着ている。

ついこの間も、「ギャルソンとマーチンのコラボの靴見つけて買っちゃったぁ~」とうれしそうにしていた。定期的に通っている歯のクリーニングの帰りに、ひいきの古着屋をのぞくのが楽しみという、ピチピチの71歳。

母の地元は、少しでも目立った格好をしようものなら「あそこの家の嫁は遊んでいる」と噂されるような地域だったから、結婚後、洋服にお金をかけるのを控えなければならなくなったが、その分めちゃくちゃ高いジーパンを買ってストレスを発散していたらしい。数万円するジーパンが存在することなど、街の人はほとんど誰も知らなかった。

ある日、母がお気に入りのダメージデニム(高額)を履いて実家に帰った時、祖父(母の父)がこっそりお金を渡してきたという。

「お金なんてくれたことないのに『いいからいいから。これで新しい服買いなさい』って、初めてじいちゃんにお金もらって、さすがに親の前でコレはダメなんだなって思って履かないことにしたの。子どももいるのにこんなボロボロの洋服着て、かわいそうだと思ったんじゃない?」

おしゃれの価値観を通して、じいちゃんと母のやさしさが交差するこのエピソードがめちゃくちゃすき。

お昼の情報番組をみていると「トレンドコーデ紹介」というコーナーがよくある。

お昼の番組で紹介しているコーデっぽい人は街中にあふれていて、お昼の番組で紹介しているコーデっぽい服を着ている人の友達もだいたい、お昼の番組で紹介しているコーデっぽい服を着ている。

お昼の番組で紹介しているコーデっぽい人が沢山いるということはつまり、それが流行なのだろう。

2021年の春夏はどうやら、くすんだパステルカラーがトレンドらしい。ショーウィンドウを眺めても、電車に乗ってくる学生グループを見ても、曖昧な茶色、曖昧な緑、曖昧な青、ユーユアユーユアーズ。

先日、所ジョージが『笑ってコラえて!』の中で、トレンドカラーの類の洋服を着ている女性スタッフ数名を目の前にして

「君たちどうしたの?粘土?」

と発したのは、わたしの中のわだかまりを一掃してくれた。

着たいものを自由に着ればいいと思いながら、大きくはみ出したくもないとも思う。だから自分がおしゃれだと思っている人と同調できた時、とてもほっとするし、すきな人が服を褒めてくれたらうれしい。