Verbal Jintの新しいアルバム『Inflection Point』がてげいい。
2021年は3分の1が過ぎたところだが、『Inflection Point』は本年のわたし的アルバムオブザイヤーをとっちゃう予感。
Verbal Jint(バーバルジント)は韓国の重鎮ラッパーの一人で、king of flowの異名を持つ人物。英語のようにするすると耳に入ってくる韓国語ラップが生まれたのは彼の功績が大きい。
ダンスフロアを盛り上げるパーティーチューンもすきだけど、自分の内面を歌うような、私的であり詩的なラップの方がもっとすき。
先日、村田紗耶香の小説『コンビニ人間』を読んだら、ラップをしたくなった。
ラップをしたことはない。だけど『コンビニ人間』を読み終えた時、なんだかとても清々して、小説に救われるって、こういうことなのかなと初めて思うと同時に、なぜか突然にわたしの中のヒップホップヘッズな部分が熱くなり、この感情を解き放つならラップだな、と思ったのだ。
もしもわたしがラッパーだったらどんなことを歌おうか。
『コンビニ人間』を読んだ直後に勢いで歌詞を書いたなら、
新しいことを始めると「どこ向かってんの?」とか言ってくるやつシネ!「あなたに恋愛して欲しいから手伝いたいのに」とかよけーなお世話なんだよシネ!というシネシネ曲ができちゃいそうで怖い。
ちなみに「どこ向かってんの?」というクソこすり倒された定型文に関しては、一言でねじ伏せるパンチラインは何なのか、長い間考えていたけれど、一向に思い浮かばないから脇を差されっぱなしの状態だ。いつか「どこ向かってんの?」を圧倒するライムを御見舞いしたいものだ。
そんなわけで、今までほとんど小説を読んでこなかったから、小説ってすごいな、作家ってすごいなと今更ながらに気がついた。
次に読んだ朝井リョウの『正欲』はさらに強烈だった。『コンビニ人間』に救われたとこで気持ちよくやめときゃよかったとも思った。ラップする前にマイクを奪われたような気分だった。
自分が正しいと思う方向へ悪気もなく誘導しようとする人には『コンビニ人間』と同様の気持ち悪さを感じるのだが、マトモ側じゃなくて良かったと安堵していた自分も、誰かにとってはうざったいマトモ側にすぎないのかもしれない。
とりあえずこの2冊を読み終えた瞬間に日本語ラップの名作『人間発電所』の中の「普通がなんだけ気づけよ人間」という名名名パンチラインが思い浮かんで、20年以上も前に、『コンビニ人間』と『正欲』を一言でまとめあげてたラッパーがいたわ・・と震えた。
小説家もすごいけど、小説を数百ページ読んで湧き上がる感情を、たった数小節で表現することができるラッパーもカッケーなと思うから、わたしもいつか小説を書くようにラップしてみたい。
誰か、わたしにビートをください。
ビトチュセヨ。